観えたものを、書いてみる。
前回、お箸を使っている様子を観ました。
記事の最後に、こんなことを書きました。
「最初に観たときと、同じものが見えるでしょうか。」
今回、同じ動画をもう一度観てみました。
すると、私自身、最初に観たときとは少し違うものが見えました。
そもそも、今お箸なのか
その前に。
今回の児童は年中です。
私は、年中だからお箸を使えるようにしなければならないとは考えていません。
年長になってから取り組んでも、遅いとは思っていません。
それでも、この子とはお箸に取り組むことにしました。
園では、給食でお箸を使う機会があります。
そして、本人は、
「お箸はできる」
と思っています。
実際、できています。
一般的なお箸の持ち方とは違いますが、物を摘み、持ち上げることができます。
本人なりの方法で、お箸を使うという目的を達成しています。
だから、本人が「できる」と思うのも自然なことなのだと思います。
一方で、お箸はこれからも生活の中で使っていく道具です。
園で使い、家庭で使い、その先の生活でも使っていく。
そして、お箸には社会の中で広く共有されている使い方があります。
本人なりの方法で物を摘めていることと、一般的な箸の操作を身につけること。
どちらか一方を否定する必要はないと思っています。
今の方法でできていることは、そのまま認める。
そのうえで、これから先も使い続ける道具だからこそ、別の使い方も身につけていく。
そう考えて、この子とは、今お箸に取り組むことにしました。
そのとき、何を観ていたのか
初回のお箸の様子を観たとき、活動記録にはこのように書いていました。
上のお箸は人差し指がかけられた状態で親指の付け根辺りで固定されている。
下のお箸は中指の第一関節で支えらえれ、上のお箸と同様に親指の付け根で挟んでおり、手のひら側の親指の付け根辺りで押して開閉作業をしていた。
全体の印象としては握り持ちである。
物を掴むときは、お箸の先端側で上のお箸とクロスさせることで下のお箸を固定し掴めている。
安定しない下のお箸で物を掴むために母指球を使って上のお箸との接点を高め物を掴むという手段を取っている。
現状では本人の持てる機能を駆使して持ち、操作しており、「お箸はできる」と本人の認識ではできていると自信を覗かせている。
今読み返すと、観えたことと、そこから私が考えたことがかなり一緒になっています。
「下のお箸を固定している」
「安定しない下のお箸」
「母指球を使って接点を高めている」
どれも、そのとき観えた動きから私が考えたことです。
では、実際には何が起きていたのか。
もう一度、動画を観てみます。
もう一度、観る
では、実際には何が起きていたのか。
前回と同じ動画です。
今度は、少し止めながら観てみます。
私は、この動画を何度も観ました。
止めて、戻して、また観る。
すると、活動記録には残していなかった動きがいくつも見えてきました。
- 0:01 上の箸は中指に乗り、下の箸は親指で挟まれている
- 0:02 物を摘むとき、手掌全体が閉じる。上下両方の箸が動く
- 0:06 摘んだとき、下の箸が上の箸に乗るように先端側で交差する
- 0:07 指の力を緩め、摘んだ物を箸から外す
- 0:09 上の箸が下の箸に重なったあと、小指が下の箸を押し上げるように動き、2本の箸が平行に近づく
- 箸を開くときには手掌も開き、摘むときには手掌も閉じる
- 0:17 右手で箸を操作している間、左手はほとんど動かない。物を摘めなかったときにわずかに動く
- 0:18 箸を持ち直す。その後は上下の箸とも中指付近に乗る
- 0:21〜0:25 おはじきを摘んで持ち上げる。途中で前腕と手首の角度が変化し、さらに手首の角度が大きく変化したあと、おはじきが落ちる
- 0:25 箸を開いた際、下の箸が中指から外れる
- 0:32 箸の後端側が交差する
- 0:35 小指も把持に参加し、下側の箸を支えるような位置にある
- 0:36 上の箸が下の箸に乗った状態で物を摘んでいる
「クロス」と一言で書いていました。
でも、ずっと同じようにクロスしているわけではありません。
手掌を開くと、後端側で交差する。
手掌を閉じて物を摘むと、先端側で交差する。
上下の箸の位置関係も一定ではありません。
途中で持ち方も変わっています。
そして、持ち方が変わると、指の使い方も変わっています。
小指を、もう一度観る
特に気になったのが、小指でした。
最初に観たときには、中指、薬指、小指が一緒に動いていることから、指をそれぞれ動かすことが難しいのではないかと考えていました。
でも、動画をもう一度観ると、それだけでは説明できない動きがあります。
0:09。
箸の位置が変わったあと、小指が下側の箸を押し上げるように動きます。
その後、2本の箸は平行に近づきます。
0:35では、持ち方を変えたあと、小指が下側の箸を支えるような位置にあります。
小指が、ほかの指と一緒に動いている。
それだけではなさそうです。
箸の位置を調整したり、支えたりするために使っている可能性もあります。
本人が意識して行っているのかは分かりません。
ただ、本人なりにお箸を使ってきた中で、こうした使い方を身につけているのかもしれません。
現場では、ここまで観ていません
ここまで書くと、支援しているその場で、これだけ細かく観察していたように見えるかもしれません。
実際には、そうではありません。
支援中に、
「今、小指が下の箸を押し上げた」
「ここでは先端側で交差した」
「このあと手首の角度が変わった」
と、一つひとつ捉えているわけではありません。
子どもは動いています。
こちらも関わりながら観ています。
その中で観えたものから考え、支援します。
動画では、止めることができます。
戻ることもできます。
同じところを何度も観ることもできます。
そうすると、そのときには観えていなかったものが観えてきます。
今回もそうでした。
当時の活動記録が間違っていたとは思いません。
ただ、もう一度観てみると、そのとき一つの言葉にまとめていたものの中に、いろいろな動きがあったことが分かります。
それでも、目的はお箸です
細かく観ていくと、いろいろなことが気になってきます。
指をそれぞれ動かすこと。
箸を支えること。
手掌の開閉。
小指の使い方。
前腕や手首の動き。
では、それらを一つずつ練習すれば、お箸が使えるようになるのでしょうか。
そう単純ではないと思います。
そして、指を上手に動かせるようにすること自体が、今回の支援の目的でもありません。
目的は、お箸を使えるようになることです。
そのために、今のお箸の使い方を観る。
うまくいかないところがあれば、その理由を考える。
必要なら、お箸とは少し離れた課題もやってみる。
そこでも、どのように取り組むのかを観る。
でも、その課題が上手になることが目的ではありません。
そこで観えたことを、またお箸に戻して考えます。
一部を観る。
全体を見る。
そして、またお箸に戻る。
お箸を使えるようになるために、何が必要なのか。
それを確かめながら、支援を組み立てていきます。
次回は、この観察から実際にどんな練習をしてみたのか。
その練習で何が観えたのか。
そして、それをどうお箸の操作につなげていったのか。
実際の支援を追いながら書いてみようと思います。
